ホーム理論編2021年度グループワーク発表 : グループB「アラウンドすみだ川を能動的につなぐ 水先案内人 アラスミ・アーツカウンシル」

私たちの考える 「アラスミ・アーツカウンシル」発表

グループB:アラウンドすみだ川を能動的につなぐ 水先案内人 アラスミ・アーツカウンシル

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グループBは概念としての船を地域資源として、アーティストを乗せて行政に届ける、その案内役となる組織を構想。行政とのディスカッションではマッチングの課題などが挙げられた。

行政とアーティストの間を取り持つ「案内人」とは?


台東区
地域で活動する人を行政に紹介してくれるんですね。基盤としての考え方、地域資源に結びつけて行政に届けるというのは素晴らしいと思います。行政は資金補助がメインでアーティストに直接、働きかけるのは難しいので。
なぜアーティストとのやりとりが難しいのでしょう?

学生

台東区
担当職員の異動が多く、特定の職員に芸術の専門知識が定着しません。行政のジレンマです。そこで「アーツカウンシル」という支援基盤からつなげてもらえるとありがたいです。

足立区
「何かやりたい」というアーティストや表現者は、困っている状況にあるということですか?
パフォーマンスや展示を目的とした場所はレンタル代を払えば借りることができますが、例えばお寺でやりたいとなったときにどこでどんな人に紹介してもらえるのかノウハウがなければわからない。水先案内人があればアーティスト側にも、場所を貸し出すまち側にも、良いかなと思いました。

学生

足立区
まちを盛り上げたい、関わる人を増やしたいという考えはどの部署も共通です。町会、自治会、商店街以外の人や、さまざまな方法でアーティストを結びつけることができればいいことですが、文化事業は年単位なので需要と供給の合致が課題ですね。
行政にまちの文化活動などを調査しているような部署はありますか?

学生

足立区
個別のアーティストの調査となると難しいですが、区の事業や区施設で行われている文化活動について調査している部署はあります。

墨田区
文化芸術振興課が担当する事業「隅田川 森羅万象 墨に夢(すみゆめ)」があります。公募企画等でその企画を実施するアーティストや活動に関わる人等との関係が生まれ、必要に応じて、他の部署に紹介することもあり、文化芸術振興課から観光や産業へのゆるやかなつながりが生まれています。調査というよりも「すみゆめ」を通じて、まちの文化活動等の情報を入手しています。

「地域資源」を切り口として、アプローチをどう工夫するか?


台東区
船を拠点にするとなると、3区でお金を出して船を使うんですね。何のために船なのか、船上で何をするのか、目的および事業効果が期待できなければ、予算を通すのは難しいのでは?
「案内人」が行政で採用されるためにはどうすれば?

学生

足立区
行政側が抱える課題をリサーチするとビジョンも見えてくるかもしれません。
例えば墨田区だと長屋、北千住だと銭湯といった面白い場所が多いですよね。地域課題の「空き家問題」に活用できることをアピールポイントにして何かできないかなと。

学生

台東区
取り壊す予定の小学校があって活用できるかもしれませんが、廃校や空き家の活用は後々の管理が大変です。

足立区
アート×空き家に何かもう一つ関係性ができればより説得力が増すと思います。例えば、教育や福祉など。実際に多文化共生社会をアートという切り口で考えるプログラムを小学校で行いましたが、やはり目的や説得力が必要。アートという一つの手段を通じて、自己と他者の違いや多文化を知る視点を育むという立て付けがあれば、学校側もある程度興味を持って聞いてくれます。
空き家問題だけでなく、教育や福祉課題も視野に?

学生

足立区
足立区が元々抱えている教育や貧困などのボトルネック的課題にアプローチするのも1つの方法ではないでしょうか。

台東区
一方で、施設管理を行っている舞台芸術の稽古場なども問題を抱えています。マンパワーなどに課題があり情報発信に力を入れられないので「アクセスが悪いけれど格安で使える」など、水先案内人からアーティストに文化施設の情報を提供してもらえるとありがたいです。

墨田区
あとは、どれだけ区のことを知って理解しているか。「なぜ墨田区に?」を説明できるぐらいでなければ理解は得られませんし、説明できた方がお願いしやすいですね。

グループB総評
担当コーチ:森隆一郎(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科 特任助教)

グループBのアラスミ・アーツカウンシルは、地域で起こる面白くて大切そうな活動をより面白がるために、その面白さの起点になる人や団体と、それを面白がる人(=アラスミ・アーツカウンシル)が同じ船に乗り込んで、さらに一緒に面白がってくれ、助けてもくれるような人や組織にも乗船をお願いして「さて、どちらへ舵を切りましょうか」と行き先を乗船者と共に考えるようなものでした。

では、実際のアーツカウンシルの業務がどんなものかといえば、助成に応募してくれた方々の審査を経て、アウトプットを観に行って、成果を評価するというのが標準的なやり方なのですが、こうやって書いてみるとその過程はなにか冷たい感じがします。ここで学生たちが提案したのは、アウトプットに至る前、表現が生まれようとする過程に積極的に関与して、共に悩み行き先を考えましょうということでした。手間はかかるかもしれませんが、このやり方はただ発表の機会を助成するよりも、伸びしろ部分が大きくて、面白くて大切な活動につながる可能性が高いだろうなと想像しました。

アイデアの源泉には、日頃実践しているアートプロジェクトでの体験や3年間のアラスミでの学びが活かされていると思うのですが、そこでこういう存在が必要だと感じたからこそ出てきたアイデアだったのではないかなと思うのです。そこには、表現を世に届けたいという芸大生ならではのある種の切実さがあるように思います。

一方、その視点を持ったまま私たちの暮らす社会に目を転じてみると、同じような切実さを抱える人たちの存在に気づきやすくなるかもしれません。「社会がこうだったら良いのに」「こんなに大変な思いをしているのに世間がまったく反応してくれない」そういう人たちに。
アートは、特にアートプロジェクトは、その表現手法の幅や、送り手受け手の関係など、世間の様々な境界を揺るがせて、産業別の機能に特化してしまった社会に新たな視点をもたらすものでもあると思います。そういう越境的な態度を持って、社会に対して切実な思いを持つ人々にも船に同乗してもらい、ただ話を聞く、ただ共に居るだけでも、その人やその周りの人たちにとっての希望となるのではないだろうか、などと想像を膨らませてみました。

事業メニューには「すすんで、結ぶ」というテーマに沿った様々な出会いの機会が用意されています。散歩をベースに楽しく地域情報を採取してマップに落とし込むことなど、地域メディアや地元の不動産会社さんたちとも協働できたら楽しそうです。また、行政の各種窓口と連携することもとても大切な視点だと思います。ある特定の相談窓口が、その分野の情報に特化しつつも、周辺の役に立ちそうな情報にリーチしていて、お互いの信頼をベースに紹介し合うような関係性を築くことができれば、誰かが地域の暮らしで困ったときにも、アートが提供できるような活動へとその人をつなげられる可能性が増えると思うのです。
大切なのは、「すすんで、結ぶ」その結び目の先に居る一人ひとりへの想像力を養っていくこと、そして結び目が一人ひとりの希望を見いだす機会になることなのではないかと感じます。「水先案内人」たちは、そういう小さな営みを積み重ねて、街が地域が希望に満ちた場所であるために愚直に努力を続けるような人たちというイメージを持ちました。とても示唆に富む提案だったと感じます。グループの皆さん、お疲れ様でした!