ホーム理論編2021年度グループワーク発表 : グループA「文化交易船 あつまる ー枠で質の高い『てしごと』あふれる街に」

私たちの考える 「アラスミ・アーツカウンシル」発表

グループA:文化交易船 あつまるー枠で質の高い「てしごと」あふれる街に

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船をアーツカウンシルにしてしまうというグループAの構想に対して、3区それぞれが興味と期待を持ってディスカッションに参加。3区連携の中間支援という役割を果たす目的に船を機能させることができるかの議論に発展した。

船を使うアイデアについて


足立区
最初に聞いたときは、概念・比喩としての船かと思いましたが、実際に船を使うことに驚きました。

墨田区
船で自由に、臨機応変に動けるというのは面白いアイデアですね。

台東区
隅田川の水運をいかすというのは行政にはない発想です。拠点が移動するアーツカウンシルという、この発想はどこから?
足立区が主催するアートプロジェクトで船上の演奏会を行った時に東京都公園協会が運営する水上バス「水辺ライン」とつながりができて、大学との協働に関心を持ってくれています。

学生

台東区
観客がたくさん集まると面白いし、「集まる」をアートに掛けた「ART丸」というネーミングも素晴らしい。観光部門でもコロナ禍のまちに活気をもたらしたいと考えていたのでアイデアの参考になりました。

3区連携の中間支援の役割、移動する船をどう活用するか?


台東区
船を拠点にするとなると、3区でお金を出して船を使うんですね。何のために船なのか、船上で何をするのか、目的および事業効果が期待できなければ、予算を通すのは難しいのでは?
恒常的に使うのは難しいので最初は単発になるかもしれませんが、仕組みづくりから始めたい企画です。
アートプロジェクト「隅田川 森羅万象 墨に夢」で隅田川を航行する「ファスナーの船」では企画は実際にどうだったのでしょう?

学生

墨田区
「ファスナーの船」はこれまでに4回開催しています。すみだリバーウォーク(東武鉄橋)から船が通るのを楽しみに待ってくれている人もいます。船を管理するとなると、やはり維持費は大きな問題です。移動するというアイデア自体はとてもいいと思うので、例えば、船ではなく、車にしてエリアを広げてもいいのでは?

台東区
支援施設としてだけでなく、ギャラリーとして足立・墨田・台東のゆかりある作品を展示するのもいいと思います。
相談会を実施したり、情報が集まる掲示板として使ったり、ゆくゆくはカフェにすることも考えています。
アーツカウンシルのことを知らない人にも、船のカフェに興味を持ってもらえれば。

学生

台東区
ターゲットはアーティストですか?
カフェができれば、アーティストと区民が交流することもできると思っています。

学生

足立区
越境する手段、混ざり合う手段としてはとても面白いと思います。
拠点が固定されないことでフラットな関係性が生まれると思います。移動することで人目につきやすいという点もあります。以前の船上イベントでも川沿いから覗いて面白がってくれる人が想像以上に多かったので、まず船にたどり着いてもらえればそこからいろんな人との出会いにつなげられるのではないかと。

学生

台東区
3区の情報が混じり合う場になるとより面白い。アーツカウンシルがアーティストだけでなく行政に対しても情報発信をサポートしてくれるとありがたいです。

グループA総評
担当コーチ:三田真由美(一般財団法人地域創造)

グループAでは、3区の文化政策や文化・芸術の活動を行うキーパーソンのリサーチを経て、文化資源としての伝統工芸や、若手クリエイターによる創作物、中小企業の産業、古民家を活用したカフェ等に着目しました。文化・芸術という既存の枠では括りきれない分野のほか、古いものを活用した新しいカルチャーから伝統的なものまでも含みました。それらを「てしごと」と定義づけることとして、アラスミ・アーツカウンシルの対象とすることにしました。

「粋で質の高い『てしごと』溢れる街に。魅力的な個性を持ち、住みたいと思えるまちづくりに貢献する」を組織のヴィジョン、「『てしごと』を生み出す人を対象に『居住・制作・流通・交流』しやすい環境整備を行っていく」をミッションとしました。それらを達成するために、支援事業と自主事業を考えました。支援事業では「てしごと」のリサーチやマッチングの実施、自主事業では隅田川を往来する定期便の水上バスを間借りし、アーツカウンシルの拠点とすることや、そこでマルシェやカフェ、パフォーマンスイベントによる事業を考案しました。

隅田川を往来する水上バスを使った自主事業のアイデアは「3区連携の場合、事務所はどこに置くのが最適なのか?」という問いから生まれたものです。アラスミ・アーツカウンシルは、3区の広域連携であることから1つの場所に事務所を定着させると1つの区が優位になるのではないか、それならば3区の間に流れる隅田川を船で移動するアーツカウンシルをつくったらよいのではないか、とアイデアにつながりました。また、新たなアーツカウンシルを設立するのであれば、もっといろんな人に知ってもらう必要があるのではないかという考えもあり、アーツカウンシルが相談や支援を求める人を「待つ」のではなく、それぞれの地域に「出掛けていく」ことを体現しているそうです。

中間発表を聞いた各行政の担当者からは、コロナ禍の観光地に賑わいを取り戻す面からも面白いという意見や、区の担当者は流動的なのでリサーチで得たノウハウを共有してくれる組織があればありがたい等の意見をいただきました。

構想の中でも、水上バスを使ったマルシェの開催は、「てしごと」を流通させるための一つの支援策としてとりわけユニークだと感じました。中間支援というよりはアートプロジェクト(学生には、アートプロジェクトの運営に携わっている人が多かったからなのか)のようなのですが、私自身が公的機関の支援策といえば助成金等の資金提供が主という固定概念もあったので、マルシェという「場」を提供するという支援が新鮮でもありました。

「あつまる(art丸/集まる)」と名付けられたこの水上バスの事業では、マルシェの他にも、船内では3区内にあるカフェ等飲食店の出張営業、また潮の満ち引きを感じられる新月や満月にはパフォーマンスイベントを開催などのアイデアもありました。隅田川という資源を活かしながら、「地域」の人が、「地域」で作られたものを購入できるので、エシカルな流通と考えることもできそうです。船の上でのマルシェは購買の体験としてもきっと楽しく、江戸時代に物売り船というものがあったそうですが、そのストーリーを知れば、さらに購買意欲を刺激するものになるかもしれません。

また、飛躍しすぎた話になってしまいますが、このような仕組みによって、地域で作られた創作物が地域で購入される小さな経済圏ができれば、アーティストへの支援にもなり、新たな文化が生まれやすい環境にも結び付くかもしれないとも考えます。もともと墨田区・台東区・足立区は東京藝大が上野や北千住に校舎を構える環境や、東京アートポイント計画共催によるアートプロジェクトなど、まちなかでのアートイベントが行われている地域でもあることから、まちなかで行われている無料アートイベントだから参加してきた人たちが、文化芸術に親しみ、アートの購入につなげられたのなら、さらなる文化・芸術の活性化になるかもしれません。