すみだ川文化圏の形成にむけて

実施日:2019年10月29日(受講生のみ)、2020年2月16日(一般公開)

登壇順に、台東区 文化振興課、墨田区 文化芸術振興課、足立区 シティプロモーション課

2019年度の本事業「Meetingアラスミ!(以下、アラスミ)」に参加した台東区・墨田区・足立区の3区による、文化政策の取り組みを紹介。各区の担当者がプレゼンテーションを行った。

台東区文化振興課は、課が携わる事業のうち、アラスミを含む11の連携事業を中心に芸術文化に関する取り組みを紹介。例えば、2010年からスタートした隅田川エリアの「GTS観光アートプロジェクト」は東京藝術大学(以下、藝大)と台東区・墨田区の共催で行った地域連携プロジェクトであり、アラスミの走りとして位置づけられると紹介。1981年から続く「台東第九公演」も藝大と区民合唱団と台東区が実行委員会を構成する。1990年からは、上野公園にある藝大や博物館、美術館、動物園などの文化施設と、上野観光連盟や松坂屋上野店、交通事業者らと組織をつくり、毎年秋季の「上野の山文化ゾーンフェスティバル」で上野エリア一帯を盛り上げている。

また、「台東区芸術文化支援制度」の実施や「たなか舞台芸術スタジオ」の運営などにより、文化芸術活動の支援を行っている。

これらの事業を手掛ける文化振興課は、2004年の「台東区文化政策懇談会」での提言をもとに企画財政部に組織編成された。2007年からは文化と観光施策を一体的に展開するため文化観光部が、さらに2009年には産業分野を含めた文化産業観光部が発足し、文化、観光、産業を一体的に推進する体制が整備された。最後に、新たな取り組みとして「たいとう文化発信プログラム」を紹介。区や芸術文化財団、民間事業者が開催する区内の芸術・文化に関わる様々な取り組みをPRしていると説明した。

墨田区はまず、墨田区文化芸術振興条例(2012年施行)を柱とした文化政策について説明し、文化芸術振興課が取り組む事業を紹介した。

区内さまざまある文化施設のなかでも注目を促したのは、すみだ北斎美術館(2016年開館)。コンパクトな美術館でありながら建設界の由緒あるBCS賞を受賞し、国際交流も盛んに行われている。来館者数は堅調に伸び、想定を上回る約77万人(2020年2月時点)を記録しているという。このすみだ北斎美術館の開館を機に始まったアートプロジェクト「隅田川 森羅万象 墨に夢(以下、すみゆめ)」では、「北斎」「隅田川」をテーマにした企画を公募。採択団体に補助金が出されるほか、月1回の情報交換・交流の場である「寄合」を通じて団体や市民が相互のイベントをサポートするなどネットワークも生まれているという。2019年度の主催・公募企画の参加人数はのべ11万4千人に上った。これらの事業には、ふるさと納税の寄付金が活用され、2020年度は、3億円以上の寄付が集まっているという。基本的に自給自足。ふるさと納税の寄付に対しては区の伝統工芸品などが返礼品として送られ、産業・観光振興にも寄与していると説明。

最後に、区が今後も新しい試みによる地域振興を目指すうえで、今回のアラスミへの参加は固定観念にとらわれない視野を広げる機会になったと述べた。

足立区もまず足立区文化芸術振興基本条例(注*)と基本計画について説明し、取り組みの成果を報告した。

シティプロモーション課は、まちのイメージアップに特化した東京都23区初の専管組織として平成22年に立ち上げられ、人事も課長・係長が外部登用されたという。課は、マイナスイメージの払拭と共に、まちの新たな魅力を創りだす取組みとして、様々な「縁」をつくり、つなぐプロモーションに注力してきた。

2011年から続くアートプロジェクト「アートアクセスあだち 音まち千住の縁(以下、音まち)」では、アーティストがまちに入って何ができるかを考えることからスタートしたという。音まちの初年度から続くプログラム「野村誠 千住だじゃれ音楽祭」は銭湯での演奏会から始まり、2014年には1010人を巻き込んだ大祭「千住の1010人」へと発展。このようにユニークで多彩なプログラムをこれまで200以上実施し、年間参加者数は約1万2千人になる。プロジェクトの担い手も9年間で200人に増え、こうした担い手が音まちを通じて人々の縁を生み出し、新たな文化活動に寄与するなどして足立区の魅力を高めてきたという。発表では、区内関係施設や参加団体の図を示しながら、参加団体が増えプラットフォーム自体の広がりも見せていると説明。足立区のシティプロモーションの目的である「足立区を誇りに思う」区民の割合の向上も、区の世論調査によると課設立当初より20ポイント以上上昇したと話す。ともに区政をつくっていくという考えの下、人と人、人とまち、人とアートがつながることによって、アートに限らずいろんな課をつなぐ取り組みによって足立区が変わってきたと印象を述べた。

 

(注*)2020年3月25日に「足立区文化芸術振興基本条例」から「足立区文化芸術基本条例」に改正。